ソフトウェアライセンス
コンピュータソフトウェアを購入したり、オンラインで使用したりする際に、ライセンス許諾を受けることから、ソフトウェアライセンスについてはなんとなくなじみがあるように思います。
また、ソフトウェアを複製・販売したり、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)のようにオンラインで提供したりすることも、ライセンスに基づくものです。ゲームなどでもそうですし、あるいは遊技機の制御用プログラムや、デジタル家電に組み込まれたプログラムなどでも、ライセンスが関わります。
ところで、こうしたライセンスはどのような知的財産に基づくものでしょうか。
著作権
著作権法では、「プログラム」は、「電子計算機を昨日させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義されています。
また、プログラムに関連の深い「データベース」については、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」と定義されています。
このように、ソフトウェア、プログラムは著作権の対象となるものですが、著作権は創作的表現について発生する権利です。単なる単一の命令のコードや、ごく当たり前のタグなどの記述、プログラム言語自体のような取り決め、単なる変数などには著作権はないとされています。
ソフトウェア特許
プログラムの機能的・技術的な特徴が、ハードウェアと協働して動作する新規なものであったり、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実現されるシステムである場合には、ソフトウェア特許、あるいはその一形態であるビジネスモデル特許となることがあります。
ノウハウ
技術上の秘密、ノウハウとして保護されるものもあります。秘密として管理されている情報であること、生産方法その他の事業活動に有用な情報であること、技術上の情報であること、が必要です。
その他の著作権
プログラムを利用してコンピュータや各種機器の画面などに表示される画像、アイコン、文字情報やこれらのレイアウトデザイン、音声などにも、創作的な表現があれば、著作権があります。
意匠権
物品のデザインを保護する意匠法では、アイコンなどは保護の対象とはなりません。しかし携帯電話やPDAのメニューのように、「物品の液晶表示に表示される図形等が、その物品の成立性に照らして不可欠なもの」であって、「その物品の表示機能により表示されているもの」であって、「図形等が、変化する場合において、その変化の態様が特定したもの」であるときは、意匠権が成立する場合があります。
商標権
ソフトウェアの名称や、ロゴデザイン、サービス名称(たとえばウェブサイト名、ウェブサービス名など)は、商標であることが多いでしょう。
ドメイン名
ドメイン名は、インターネットうえの住所のようなものですが、ウェブサイトを識別したり広告したりするための表示のしかたなどによっては、商標として機能するものです。
また、不正使用については不正競争防止法により保護されます。
リバース・エンジニアリング
リバース・エンジニアリングの適法性について
リバース・エンジニアリングが許されることについては、特許法69条、半導体回路配置法12条2項には、試験・研究のための実施についての明確な規定があるのに対し、著作権法には規定がありません。
このため、著作権法上は違法となるという反対解釈が唱えられたこともありますが、今日では研究、評価のためにリバース・エンジニアリングを行うことは違法ではないと考える学説が支配的です。
リバース・エンジニアリングが許される限界は、
(1)純粋に科学技術的な知見を得る目的
(2)ソフトウェアの権利侵害を発見する目的
(3)ユーザーが使用するために必要な改変をする目的
(4)ユーザーが他の機械で使用するために改変する目的
(5)オリジナルメーカー以外のメーカーが上記(3)、(4)の目的に適合するような、よりよいソフトウェア等を開発する目的
のうち、(1)、(2)は著作者の権利を侵害しない研究的な行為であり、リバースエンジニアリング否定説をとる学説であっても著作権法上問題ないとされることが多く、今日ではほぼ異論がありません。
解析された創作的表現をもとにして新しいプログラムを開発することについては、リバース・エンジニアリングの結果、解析された著作物を他の目的のために複製、改変、翻案、譲渡したりすることは、許されるリバース・エンジニアリングの範囲を超え、著作権法違反となる可能性があります。
米国連邦最高裁においてプログラムのリバース・エンジニアリングは合法であることは判例によって認められほぼ固まっております。ヨーロッパでも、リバース・エンジニアリングは合法である旨の欧州連合指令が出されており、欧州各国はこれにならうものとみられています。
リバースエンジニアリングを禁止する契約条項と独占禁止法
次に、リバース・エンジニアリングについて合法説とこれを否定する説があり、またその境界にも若干の争いがあるところ、仮に今日の多数説となっている合法の立場をとった場合にも、リバース・エンジニアリング禁止条項を有する契約の存在が問題となります。
アメリカの裁判例において契約無効とされた範囲は、「プログラム所有者が機械で当該プログラムを使用するため不可欠な改変を禁じること」であり、ECの判例において契約無効とされた範囲は、「プログラムの使用権限を有する者が他のプログラムとの互換性を達成するために必要な再製と翻訳を禁じること」です。
日本では、リバース・エンジニアリング禁止契約条項は独占禁止法上問題があるという考えが相当受け入れられており、経済産業省においてもこのような議論がなされているものの、実務上はリバース・エンジニアリング禁止条項が広く受け入れられており、その目的や態様により結論が左右されることが想定されます。
したがって、ソフトウェアのライセンス契約にあたっては、リバース・エンジニアリングを禁止するかどうか、禁止する範囲と許される範囲等を、明確にしておくことが、後々のトラブルを避けるためには必要です。
しかしその場合には、独占禁止法に定める不公正な取引や、公序良俗などの民法の基本原則に抵触しないような契約内容にする注意が必要になります。



